最初の推しをスカウトしよう
表裏
その唇は誰のもの
言葉より遅く (Produced by Zero//)
むかしむかし
おにぎりひとつ
柿の種
笑って
交換した
同じ春に
違うものが
芽吹いた
その日から
私の名前は
私より先に
歩き始めた
「またやった」
誰かが笑う
知らない私を
胸に貼られた
知らない私が
廊下を渡る
本当の私は
誰にも届かない
口を開けば
また遠ざかる
だから
土を耕した
言葉は
速い
でも
枯れる
私は
急がない
今日も
水をやる
噂は走る 走る
走る 走る 先に
私より先に
私を決める
誰が言った
聞いた聞いた
見た見たって
そうらしいって
違う違う
ほんとほんと
やっぱそうだ
知らないけど
噂は走る 走る
走る 走る
私は
今日も
種を蒔く
実るのは
あとで
朝の挨拶
昼の手伝い
夜のありがとう
何も言わない
小さな種を
今日も
置いていく
昨日より
少しだけ
笑う人が
増えていた
赤い実は
今年も
ちゃんとなった
誰も見ない朝に
赤くなるものを
私は
知っていた
ひとり
またひとり
足を止めた
「あれ……」
その一言が
芽を出した
昨日まで
笑っていた人が
今日は
黙っている
噂は
少しずつ
居場所を失う
噂は走る 走る
走る 走る 先に
私より先に
私を決める
でも
触れた人だけは
立ち止まる
季節は
黙って
巡っていく
あなたの口から
あなたが見える
私は
何も言わない
あの日
私も呼んだ
聞こえなかったでしょう
ある日
私は言った
「もう
みんな知ってる」
その日から
あなたは
笑わなくなった
噂は走る 走る
走る 走る
最後に
止まった
呼びかける声は
廊下で止まり
誰も
返事を
しなかった
私は
振り向かない
次の誰かへ
赤い実を
渡していた
私は
もう
説明しない
今年も
ちゃんと
甘かった
WHICH?!15s